今回は、「造血幹細胞移植」について詳しく解説していきたいと思います。
移植ってよく聞くけど、実際どのようなものなのか分からないよね?
【この記事で分かること】 ・造血幹細胞移植の詳細について ・移植に伴う副作用や合併症について
造血幹細胞移植とは?
造血幹細胞移植とは、造血機能に異常をきたし正常な血液細胞を作ることができなくなった患者に造血幹細胞を移植し、造血機能の正常化を図る治療法です。
白血病などの腫瘍性疾患の治療に主に用いられますが、非腫瘍性疾患にも適応となる場合があります。
腫瘍性疾患の場合、移植による正常増血の回復が期待できるため、通常では使用できない程大量の抗がん剤を使用することができます。そのため、がん細胞の徹底的な排除ができることになります。これが、造血幹細胞移植の本来の目的なのです。
対象者
造血幹細胞移植には、前処置やGVHDなどのリスクが伴うため、すべての患者が対象にはなりません。
【◎適応となる対象】
・原則65歳以下
・他の治療での改善が期待できない場合
【✖️適応とならない対象】
・高齢者や臓器障害のある患者
・化学療法に全く反応しない腫瘍
移植の種類
造血幹細胞移植は、ドナーの種類によって自家移植・同種移植・同系移植に分けられ、移植片によって骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植に分けられます。
まずはそれぞれについて、大まかに説明します。
自家移植
自家移植とは、完全寛解期の患者から造血幹細胞を採取し、凍結保存しておき、再輸注する方法です。
メリットとデメリットは以下の通りです。
⭕️・拒絶、GVHDのリスクがない。 ・ドナーを探す必要がない。 ❌・自分の造血幹細胞に腫瘍細胞が混入している可能性があり、それによる再発のリスクがある。 ・GVT効果がない。
自家移植は、自分の造血幹細胞を移植するので、移植後の副作用(GVHD)が少ないのが特徴的と言えるでしょう。
同種移植
同種移植とは、ドナーに造血幹細胞を提供してもらい、患者に輸注する方法です。
メリットとデメリットは以下の通りです。
⭕️・GVT効果が期待できる。 ❌・GVHDのリスクがある。 ・免疫抑制剤を使用するため感染症にかかりやすくなる。 ・ドナーが見つかりにくい。
同種移植は、ドナーの造血幹細胞を移植するので、移植後の副作用(GVHD)が起こりやすいのが特に注意すべき点と言えます。
骨髄移植
骨髄移植とは、ドナーの骨髄液に含まれる造血幹細胞を患者に移植する方法です。
ドナーは全身麻酔下で採取されます。
通常、両側後腸骨陵から採取します。
メリットとデメリットは以下の通りです。
⭕️・他の移植と比べて実績と歴史がある。 ❌・ドナーへの負担が大きい。
骨髄移植は、全身麻酔下で造血幹細胞を採取するので、ドナーは入院して採取する必要があり、負担・侵襲が大きくなってしまいます。
末梢血幹細胞移植
末梢血幹細胞移植(PBSCT)は、ドナーに対しG-CSFを投与し、末梢血にある造血幹細胞を採取後、患者に移植する方法です。採取は採血をして行います。
G-CSFについての詳細は、以下の記事をご覧ください。
https://yacchi-mens-nr.com/g-csf/
大まかな移植の流れは以下の通りです。
G-CSF投与➡︎採取➡︎移植
⭕️・移植後の増血回復が早い。生着が約2週間と早い。 ・ドナーの全身麻酔が不要で負担が少ない。 ❌・慢性GVHDの頻度が高い。 ・ドナーに対してG-CSF投与が必要。(副作用あり)
末梢血幹細胞移植は、普段の採血のように採取を行うため、骨髄移植と比べてドナーへの負担が少ないのが特徴的です。
臍帯血移植
臍帯血移植(CBT)とは、分娩後の胎盤と臍帯に含まれる胎児由来の血液(臍帯血)にある造血幹細胞を移植する方法です。
⭕️・ドナーへの負担が少ない。 ・HLA型の適合範囲が広い。 ・凍結保存されているため必要な時にすぐ使用できる。 ・慢性GVHDが起こりにくく、重症化しにくい。 ❌・生着が3〜4週間と遅い。 ・生着不全のリスクが高い。 ・採取できる細胞数が少ない。 ・移植後の感染症が多い。
GVHDとは?
移植片対宿主病(GVHD)とは、ドナー由来のリンパ球が、患者を非自己と認識してしまい攻撃してしまう病態のことです。
GVHDは、100日以内に起こる急性GVHDと、100日以降に起こる慢性GVHDに分けられます。
急性GVHD
急性GVHDは、皮膚・肝臓・消化管に生じることが多いです。
●皮膚:皮疹(丘疹、水疱、紅皮など)
●肝臓:黄疸
●消化管:下痢、腹痛、嘔気・嘔吐など
慢性GVHD
慢性GVHDは、皮膚・口腔粘膜・眼球・肺に生じることが多いです。
●皮膚:皮膚の硬化、色素脱失、爪の変形・剥脱など
●口腔粘膜:口内炎、口の乾燥
●眼球:眼の乾燥
●肺:呼吸障害
治療法
主な治療法は、ステロイド剤や免疫抑制剤の使用が中心です。また、症状に応じて外用薬や内服薬、点眼薬などを使用します。
まとめ
今回は、「造血幹細胞移植」についてまとめました。移植には様々な種類があり、時と場合によって使い分けられています。
その移植それぞれにメリットとデメリットがあり、それを踏まえた上で選択する必要があります。また、それに伴う副作用も多くあります。
この記事が何か少しでも参考になれば幸いです。ご視聴ありがとうございました。
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